OpenAIがEUでChatGPTの文章に透かしを導入。ただしAPIでは、自分で有効にしない限りオフのままです

Surya Pratap
By Surya Pratap

2026年10月18日

8 min read

AI & Technology
2つに分かれた図。左側は、OpenAIの透かしtextGrainの適用範囲です。EUのChatGPTとCodexのユーザーには全プランでデフォルトでオン、APIでは全世界で一部のモデルについて任意で、デフォルトはオフ、検出ツールは承認を受けた研究者と専門機関のみが利用できます。その下に、AI生成コンテンツを機械で検出可能にすることを求めるEU AI法の要件と、すでに市場に出ている提供者の期限である2026年12月2日、世界売上高の最大3%の罰金が示されています。右側は、公表された検出率です。誤検出率1%の条件で、200トークンの文章は約80%、400トークンの文章は約95%。400トークンの文章では、未編集で約92%、単語の10%を同義語に置き換えると66%、25%では約17%です。ChatGPTではオン、APIではオフHover to explore
OpenAIが提供者である場所では、透かしはデフォルトでオンです。あなたがプロダクトを作る場所では、オンにするかどうかはあなたの設定です。

OpenAIの透かしについての報道の多くは、学生のレポートがChatGPTで書かれたものかどうかを見分けられるようになるのか、という点に注目してきました。創業者にとってより役立つのは、発表の中のたった1行です。APIでは、透かしはデフォルトでオフのままです。ChatGPTの法令対応はOpenAIの仕事です。しかしAPIの上に作られたプロダクトは、自分で判断しなければならないかもしれません。

本記事は、OpenAIが2026年10月5日に公開した発表「Our approach to EU text provenance rules」と、それを報じたTechCrunch、The Next Web、Techstrong.ai、Gadget Reviewの記事に基づいています。検出率の数値はOpenAI自身のものです。第3節以降は筆者の見解であり、法的助言ではありません。

1. OpenAIがしていること

透かしの名前はtextGrainです。隠し文字やメタデータを加えるものではありません。秘密鍵に結びついた疑似乱数を使って「モデルの単語の選び方を微妙に調整」し、普通に読める文章の中に、検出ツールだけが見つけられる統計的なパターンを残します。パターンは単語そのものに含まれるため、コピー&ペーストしても残ります。

適用範囲は次のとおりです。

  • EUのChatGPTとCodex: 全プランの対象ユーザーでオン。今後数週間で順次展開されます。
  • API(全世界): 一部のモデルで顧客が任意に有効化できます。デフォルトはオフです。
  • EU以外のChatGPT: 有効化されていません。
  • 検出ツール: 承認を受けた研究者と専門機関のみが利用できます。一般向けのツールはありません。

OpenAIによると、透かしを有効にしてもモデルの性能に目立った変化はなかったとのことです。手法は、ペンシルベニア大学とイェール大学の研究者と共同で執筆した技術レポートで説明されています。

2. なぜ今なのか:EU AI法

EU AI法の第50条第2項は、AI生成コンテンツを機械が読める形式で検出可能なように表示することを求めています。透明性ルールは2026年8月2日に発効し、すでに市場に出ている提供者には2026年12月2日までの猶予があります。Techstrong.aiによれば、罰金は**世界の年間売上高の最大3%**です。

ほかの研究所も動いています。Anthropicは8月から、一部の例外を除き、世界中でClaudeの文章に透かしを入れ始めました。同様の統計的手法で、検出ツールの利用も制限されています。

3. 検出の精度

OpenAIが公表した数値(誤検出率1%の条件)は次のとおりです。

文章検出率
200トークン、未編集約80%
400トークン、未編集約95%
400トークン、単語の10%を同義語に置換66%(約92%から低下)
400トークン、単語の25%を置換約17%

短い文章、数学の解答、翻訳された文章でも検出は弱くなります。

OpenAIは、これが何を証明するのかについて珍しいほど率直です。textGrainは「確実な検出を保証するものではない」とし、検出されなかったとしても「人が書いたという証明にはならない」と述べています。文章がどの程度人の手で編集されたのか、内容が正確か、誰が生成したのかもわかりません。

透かしが検出ツールに伝えられるのは、「この単語の大半はおそらくモデルが書いた」ということです。「人が書かなかった」ことは誰にも伝えられません。

4. APIでEUのユーザーにサービスを提供している場合

計画が変わるのは、この部分です。EUのユーザーがChatGPTで文章を読むとき、提供者はOpenAIで、透かしはオンです。EUのユーザーがあなたのプロダクトでAPI経由で生成された文章を読むとき、あなたが有効にしない限り透かしはオフです。

AI法の表示義務があなたに課されるかどうかは、あなたの立場によって変わります。たとえば、自社のAIシステムをEU市場に出しているのか、他社のシステムを導入して使っているのか、といった点です。これはブログではなく弁護士に聞くべき問題です。ただし、答えがどうであれ、次のことはやっておく価値があります。

対象になるかを確認する。 EUのユーザーに届く文章を生成する機能を、使っているモデル、文章が公開・共有されるかどうかとあわせて書き出します。そのリストを、12月2日より前に法律の専門家に見せましょう。

APIの設定を意図的に決める。 対応モデルでは、有効化は設定の変更だけです。オフのままにするなら、その理由を記録しておきます。複数の提供者を使っているなら、それぞれを確認しましょう。透かしの仕組みもデフォルト設定も異なります。

ユーザーに何をしているかを伝える。 出力に透かしが入るなら、特に文章を公開するユーザーに対して、必要な場所で伝えます。入らないなら、入っているかのように見せてはいけません。いずれにしても、これは規制当局が今求めている自社の主張と実際の取り組みの記録の一部です。

「検出されない」を売りにしない。 透かしを消す、あるいは回避すると約束するツールは、透明性に関する法律の間違った側に立つことになり、ほかのあらゆる面でも欺瞞を疑われます。

5. 文章がAIで書かれたかを判定するプロダクトの場合

採用ツール、盗用チェッカー、出版プラットフォーム、教育向けプロダクトは、透かしを答えとして扱いたくなります。しかし、まだそうではありません。

  • 検出ツールを自分で使えない: 承認を受けた研究者に限られており、提供者ごとに別のツールが必要です。
  • 少し編集するだけで無効になる: 単語の4分の1を置き換えると、検出率は約17%まで下がります。
  • 陰性は何も証明しない: OpenAI自身がそう明言しています。

人に関する判断には使わない

文章が「AI生成に見える」という理由で、プロダクトが誰かを採点したり、フラグを立てたり、不合格にしたりするなら、透かしがあってもその判断は安全にはなりません。いつか使えるようになったとしても、人が確認する判断材料の1つとして使うべきです。誰かが応募や成績を失う理由にしてはいけません。

6. 筆者が言い切らないこと

APIの顧客全員が透かしを入れなければならないとは言えません。 義務はAI法上の立場によって変わります。OpenAIがAPIでデフォルトをオフにしていることは、ChatGPTでの自社の対応がAPIに自動的に及ぶとは考えていないことを示唆しますが、それは法的な判断ではありません。

検出率の数値が独立したものだとも言えません。 OpenAI自身のレポートによる数値です。

透かしでAIコンテンツの出所の問題が解決するとも言えません。 透かしが示すのは、ある提供者のモデルが生成した文章で、その提供者の制限付きツールでしか検出できません。ほかのモデルの文章や大きく編集された文章は対象外です。

12月2日が最終的な期限だとも言えません。 AI法の期限やガイダンスは、これまでにも変わってきました。対応する時点で最新の状況を確認してください。

まとめ

OpenAIは、AI生成コンテンツを機械で検出可能にするというEU AI法の12月2日の期限を前に、textGrainでEUのChatGPTとCodexの文章に透かしを入れています。APIでは、一部のモデルで任意に有効化でき、デフォルトはオフです。検出は、長く未編集の文章ではよく機能しますが、短い文章や編集された文章では弱く、一般には使えず、人が書いたことを証明するものでもありません。

スタートアップにとっての問いは、ChatGPTが法令に対応しているかどうかではありません。EUのユーザー向けの自社プロダクトに表示が必要かどうか、そしてその判断を意図的に下したかどうかです。

12月2日までに、AI生成の文章をEUのユーザーに届けている機能をすべて書き出し、提供者ごとに透かしの設定を確認し、その両方を弁護士に見せてください。そして、文章がAIで書かれたかどうかで人を判断するプロダクトなら、自分で使えない検出ツールに頼るのはやめましょう。

出典:OpenAI「Our approach to EU text provenance rules」(2026年10月5日)、TechCrunchの報道による — textGrainの名称と仕組み、コピー&ペーストへの耐性、EUのChatGPTとCodexへの展開、APIでの任意設定、検出ツールの利用制限、性能への影響がないこと、92%と66%の数値、ペンシルベニア大学・イェール大学との共同レポート、「人が書いたことを証明しない」という説明。The Next Web — APIでデフォルトがオフであること、すでに市場に出ている提供者の12月2日の期限、8月からのAnthropicの全世界での透かし導入。Techstrong.ai — 第50条第2項、8月2日の発効、世界売上高の最大3%の罰金、25%編集後の17%という数値。Gadget Review — 誤検出率1%での200トークン約80%、400トークン約95%の検出率、textGrainは「確実な検出を保証しない」という説明。第4節から第6節は筆者の見解であり、法的助言ではありません。

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